この前の週末、「あしたの会」の劇を観に行ってきましたー。

この「あしたの会」は、耳が聞こえる人と聞こえない人が一緒になって
手話・音声を使った劇を作ろう、と立ち上がってできた劇団です。
京都にある劇団なんだけど、今ではあちこちで公演をしていてどれも
満員御礼という人気ぶりです。

その「あしたの会」が、京都府立ろう学校の「3.3声明・授業拒否」を取り上げて
ほぼ再現に近い形で劇をするということで、友達みんなと観に行ってきましたー。

3.3声明・・・知らない人も多いと思うので、ちょこっと説明を。

背景は、昭和40年代の京都府立ろう学校。
その当時は、聾学校では「手話禁止」されており、生徒がちょっとでも手話を
使うと教師が生徒を叩いたりするといったことがありました。

そして、教師は、生徒たちにいつもこんなことを言っていました。

「あなたたちろうあ者は、耳が聞こえないのだから、聞こえる人の意見や言葉を
よく聞いて常に従っていれば、周りからかわいがられるのだから
何も言わず、逆らわず、意見も言わず、ただおとなしくしたがっていなさい。」

意見を言うことも、自分の自我を持つことも、反抗することも、
全てが許されない時代だったのです。

そんな中、プールの清掃をある先生が生徒に頼んだのだけど、
雨が降ってきたのと、水道の水が出なかったということで中止になりました。
その中止にした先生は、他の先生たちに「プール掃除は中止になった」ということを
伝えていなかったのだけど、それを知らない先生が怒って生徒たちに
「なんでプール掃除をしないんだ!」と。
生徒たちは、「○○先生から中止になったと聞きましたけど・・・」と言ったら、
「そんなことはありえない!聞いてない!おまえらは俺に逆らうのか!!」と
いう感じで怒って・・・

という事件がありました。

それまでも生徒たちの人権が平気で無視され踏みにじられていたのが
積もり積もって、それまで我慢に我慢を重ねてきた生徒達がついに爆発し、怒って、
次の日の写生会をボイコットし学校に集まり、他の生徒たちやお母様方などに
自分の立場を書いたビラを配った・・・ということがありました。
これが、授業拒否事件です。

まぁ、本当はもっと詳しい説明があるんだけど、長くなりそうなので割愛。

これらのことがあってから、「ろうあ者にも人権がある」「ろうあ者の声をもっと聞け」
という、ろう教育の民主化運動がなされ、差別への正しい理解をしようという運動が
始まったわけですねー。

これが昭和41年。
今からたった40年ほど前。
わずか40年ほど前に、こんなことがあったんだなあ・・・・と思わずにはいられませんでした。

劇自体も本当にリアルで、みんな演技がうまくて、はっきりいって学芸会レベル以上の
プロに近いものがありました。
2時間だったけど、引きこまれてしまいました。

苦しい、つらい、切ない、嬉しい、感動する・・・
色々な気持ちが色々な手の表現や表情、体の動きにこめられていて、
私の友達なんか感情移入しちゃって泣いてしまう始末。

それぐらい、みんな本当に本当に長い時間をかけて何度も何度も練習を重ねてきたんだな、という
のがよく分かりました。

それだけではない。
みんなにとっても身近な問題だったからこそ、劇団の人々も役に入りこめたんだと思います。


今、ろう学校でも色々な差別がまだまだあると聞いています。

耳が聞こえない教員も近年、たくさん増えているとも聞きます。
でも、それでも差別はなくならない。

なぜか?

もしかしたら、その耳が聞こえない教員の中にも、自分の置かれている立場、差別ということを
はっきりと認識していない人がいるからかもしれません。

耳が聞こえない教員が増えるのは喜ばしい。
でもその一方、その人たちも、自分が置かれている状況などをしっかり理解して、
差別があれば「それは差別です」とはっきり言っていける力を身につけていくこと・・・

そうしてはじめて、ろう学校の中での「差別」もなくなっていくのではないかと思いました。

耳が聞こえない教員を「ただやみくもに増やす」のではなく、「増えたから嬉しい」だけではなく、
その人たちもきちんと「自分の耳が聞こえないということ」「差別があるということ」などを
理解し、立ち向かっていける力がある教員が増えていければ、ろう学校も変わるのではないかとあしたの会の公演を見て感じました。

あしたの会の皆様、お疲れ様でした。

また次何かの公演があったら観に行きますー!!

あ、みなさんもぜひぜひ。
あしたの会の公演は、音声通訳・字幕つきですので聞こえる人でも遠慮なく観に行けると思います!

あしたの会公式HP→→クリック
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